2019年第1四半期
グリーンボンドマーケットレビュー
(大和証券株式会社)

対象期間に発行されたグリーンボンドの概要

2019年第1四半期(2019年1月~3月)は、発行件数が限定的となった一方で、国内での新たな資金使途となる起債や公募ハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)により、グリーンボンド市場の裾野が着実に拡がったといえる。

1月に小田急電鉄が従来の車両に比べ、電力消費量に削減効果のある車両の新造及びリニューアル等を資金使途とするグリーンボンドを発行した。本グリーンボンドは「小田急ゆけむりグリーンボンド」の愛称で個人投資家を対象とした社債であり、国内鉄道会社では初のグリーンボンドである。

住宅金融支援機構が、初のグリーンボンドを発行、2018年度グリーンボンド発行モデル創出事業のモデル発行事例である。本グリーンボンドの資金使途は、【フラット35】(買取型)において「省エネルギー性に優れた新築住宅」を対象とした住宅ローン債権の買取代金である。住宅ローンを資金使途とするグリーンボンドの発行は国内では初の事例である。

3月には東京建物が、グリーンボンドとして国内初の公募ハイブリッド社債を発行した。発行額は、グリーンボンド適格性の評価を受けたグリーンボンドとして国内で過去最大規模となる500億円を実現。資金使途は、第三者のビルディング認証機関からの上位2つ認証を受けたグリーンビルディングの取得・建設資金、資金のリファイナンスを対象としており、CBI(Climate Bonds Initiative)からは『認証レベルは最高レベルであり、ambition(野心)を示している』と紹介されている1

国内グリーンボンド発行リスト
発行体 発行時期 発行金額 資金使途(要約) 利率 償還期間
小田急電鉄 2019年1月 100億円 電力消費量削減効果のある車両の新造及びリニューアル資金、東北沢-和泉多摩川間における複々線化事業、ホーム延伸、ホームドア設置、駅舎および駅周辺の緑化など、駅改修に係る資金 0.10% 3年
カナディアン・ソーラー・グループ 2019年1月 5,800万米ドル 太陽光発電事業 非公開 19.2年
住宅金融支援機構 2019年1月 100億円 【フラット35】(買取型)において、「省エネルギー性に優れた新築住宅」を対象とした住宅ローン債権の買取代金 0.548% 20年
リニューアブル・ジャパン 2019年2月 89億円 太陽光発電事業 非公開 22年
ケネディクス・オフィス投資法人 2019年2月 20億円 一定の環境基準を満たすグリーン適格資産(KDX 小林道修町ビル及びKDX 虎ノ門一丁目ビル)の取得に要した借入金の借換 0.39% 5年
日立キャピタル 2019年2月 100億円 日立キャピタルグループが発電事業者として運営する岡山県新見市の太陽光発電事業 0.21% 4.8年
こなんウルトラパワー 2019年2月 1.1億円 太陽光発電設備の設置資金と市内の小学校4校のLED化資金 非公開 15年
JAソーラージャパン 2019年2月 53億円 太陽光発電事業 非公開 21.1年
東京建物2 2019年3月 500億円 グリーンビルディングの取得・建設資金および当該資金のリファイナンス 当初
2.15%3
40年4

グリーンボンドに対する発行体の関心動向

2019年第1四半期は、環境省によるグリーンボンド発行促進体制整備支援事業に関して2018年度の最後の四半期となるため、3月に向けてグリーンボンド発行は減少傾向になった。

グリーンボンドの起債予定を公表した発行体では、発行市場の環境を考慮して、2019年第1四半期中に起債手続きを進めるよりも、投資家の新年度入りとなる2019年度第2四半期以降の時期に起債実施を検討する動きも確認された。

グリーンボンドに対する投資家の関心動向

グリーンボンドとして国内初の公募ハイブリッド社債を発行した東京建物債においても、通常のグリーンボンド同様、投資家による投資表明が公表された。グリーンボンドへの投資意義を対外的に公表できる投資表明を希望する投資家の拡がりが確認できる。

その他グリーンボンド市場のトピックス

3月に、アシックスが国内事業会社として初のサステナビリティボンドを発行。サステナビリティボンドとは、グリーンプロジェクトに加えて、ソーシャルボンドの資金使途の対象となるソーシャルプロジェクトの双方を資金使途とする債券である。国際資本市場協会では、ソーシャルボンドはグリーンボンド同様に「ソーシャルボンド原則」が、サステナビリティボンドは「サステナビリティボンド ガイドライン」が策定されている。

3月に、「EUサステナブルファイナンス行動計画」に関連する「EUグリーンボンド基準(EU GBS)に関する中間報告書」が公表された。EU GBSは、国際資本市場協会策定のグリーンボンド原則とは異なるものであり、ベストプラクティスをまとめた任意基準と認識されている。本年6月末目途に改良されて公表される予定であるが、EUにおける新たな基準として注目される。