2019年第3四半期
グリーンボンドマーケットレビュー
(三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)

対象期間に発行されたグリーンボンドの概要

2019年第3四半期(2019年7月~9月)には、18の発行体によるグリーンボンドの起債が行われ、うち、日本市場における発行金額合計は1,500億円を超え、発行残高は順調に拡大している。

2019年7月には、10件を超える起債が行われた。事業法人では、高砂熱学工業が省エネ機能を有した研究センターの建設資金・設備資金に充当することを資金使途とする起債を行い、発行金額50億円に対して30件以上の投資表明を獲得するなど投資家からの関心の高い起債となった。またその他、明電舎が、電気自動車用部品の量産設備増強資金に充当することを資金使途とするグリーンボンドを発行し、国内民間企業で初めてCBI認証1を取得した。金融機関では、三菱UFJフィナンシャル・グループが、欧州市場で再生可能エネルギー事業やグリーンビルディングを資金使途としたグリーンボンドを5億ユーロ起債し、旺盛な需要を獲得した。

また2019年9月は、10の発行体により、発行金額合計が1,000億円に迫る起債が行われた。中でも、三井不動産による「日本橋室町三井タワー」の保留床取得資金のリファイナンスを資金使途とした起債は、発行金額が500億円と大型案件となっている。また、カネカは日本の化学会社では初となるグリーンボンドを、大建工業は日本の建材業界では初となるグリーンボンドを、住友倉庫が日本の倉庫会社では初となるグリーンボンドを起債するなど、グリーンボンドの発行体となる業種も拡大を見せている。

国内グリーンボンド発行リスト
発行体 発行時期 発行金額 資金使途 利率 償還期間
三菱UFJFG 2019年7月 5億ユーロ 再生可能エネルギー事業、グリーンビルディング 0.848% 10年
GLP投資法人 2019年7月 80億円 「グリーン適格資産」の取得資金のリファイナンス 0.608% 10年
住宅金融支援機構 2019年7月 100億円 【フラット35】(買取型)において、「省エネルギー性に優れた新築住宅」を対象とした住宅ローン債権の買取代金 0.273% 20年
2019年9月 200億円 0.055% 10年
アクティビア・プロパティーズ投資法人 2019年7月 50億円 「グリーン適格資産」の取得資金のリファイナンス 0.22% 5年
積水ハウスリート 2019年7月 40億円 「グリーン適格資産」の取得資金のリファイナンス 0.22% 5年
2019年7月 25億円 「グリーン適格資産」の取得資金のリファイナンス 0.57% 10年
高砂熱学工業 2019年7月 50億円 省エネ機能を有した研究センターの建設資金・設備資金に充当 0.27% 7年
オリックス不動産投資法人 2019年7月 70億円 「グリーン適格資産」の取得資金のリファイナンス 0.220% 5年
明電舎 2019年7月 60億円 電気自動車用部品の量産設備増強資金の一部に充当 0.260% 5年
アドバンス・レジデンス投資法人 2019年7月 50億円 「グリーン適格資産」の取得資金のリファイナンス 0.220% 5年
日本プライムリアルティ投資法人 2019年7月 50億円 「グリーン適格資産」の取得資金のリファイナンス 0.570% 10年
いちごECOエナジー株式会社 2019年7月 29億円 6つの発電所の太陽光発電事業に要するリファイナンスおよび建設資金に充当 非公開 10年
ジャパン・ホテル・リート投資法人 2019年7月 20億円 ホテルの改装資金のうち、空調機器、電気設備などのCO2削減効果のある設備や、水使用量等環境に資する設備に関する投資資金および工事資金のリファイナンス 0.400% 5年
三井不動産株式会社 2019年9月 500億円 「日本橋室町三井タワー」の保留床取得資金のリファイナンス資金 0.09% 5年
カネカ 2019年9月 50億円 カネカ生分解性ポリマーPHBHの製造設備および研究開発費用 0.110% 5年
大建工業 2019年9月 50億円 素材事業を展開する国内主力工場2箇所の改修のための投資資金およびリファイナンス資金に充当 0.20% 3年
野村不動産マスターファンド投資法人 2019年9月 30億円 グリーン適格資産の取得に関する既存 借入金 の期限前弁済の一部に充当 0.530% 10年
住友倉庫 2019年9月 50億円 電力使用量削減プロジェクト(空調機器の更新及び照明器具の LED 化)及び再生可能エネルギー発電プロジェクトに関する資金(リファイナンスを含む)に充当 0.080% 5年
東急不動産キャピタル・マネジメント株式会社 2019年9月 62.8億円 太陽光発電所の建設資金 非公開 20.9年

グリーンボンドに対する発行体の関心動向

第3四半期については、18の発行体によりグリーンボンドが発行されており、当年度の第1、2四半期と比べて大幅な増加となった。また先述の通り、グリーンボンドを発行する業態も増加しており、持続可能な社会への貢献意識から、グリーンボンドに対する関心がさらに高まっているのではないかと考えられる。

また、金融安定理事会(FSB)により設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、2019年6月に現状報告レポートを公表した。レポートでは、TCFDに賛同する組織の数が増加していることが示されており、グローバルベースで気候関連財務情報の開示に取り組む姿勢が浸透してきていることが窺える。気候に関するより質の高い情報開示が、より望ましい手段・条件での資金調達に繋がるといった点がグローバルに認識されてきており、これは発行体にとっての多大な関心事項となろう。

グリーンボンドに対する投資家の関心動向

2019年8月、国際協力機構(JICA)は国際金融公社(IFC)が策定したインパクト投資の運用原則に日本の投資家として初めて署名した。インパクト投資とは、従来の経済的なリターンの獲得に加え、投資を通じて社会的課題の解決を目指す投資のことであり、経済的リターンと社会的リターンが明確に数値化されたレポーティングを作成する必要がある。今までは、発行体サイドで調達資金により生み出されたインパクトを報告していたが、これからは投資家サイドでも、ただESG債に投資するだけではなく、明確な社会的リターンがあるものを選別して投資を行い、その結果を報告するという流れが加速することが考えられる。

また、2019年6月にフランスの保険・金融グループ大手のアクサ・インベストメント・マネージャーズが、まだ脱炭素化が十分に進んでおらず、グリーンタクソノミーを満たすグリーンボンドの発行を正当化することが困難な企業が、グリーンボンドに代わり脱炭素化を図ることに繋がる債券発行を可能にする新タイプの債券(トランジションボンド)へのガイドラインを自主的に制定・公表したことが話題を呼んだ。こうした責任ある投資家としての取組は、今後、世界的に広がっていく可能性があり、市場の発展に寄与することとなるものと考えられる。

その他グリーンボンド市場のトピックス

国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)は2019年9月、国連責任投資原則(PRI)の銀行版となる「国連責任銀行原則(PRB:Principles for Responsible Banking)」が正式発足したと発表した。PRBは世界131行でスタートしたが、その運用資産総額は47兆米ドルと、世界の銀行全体の3分の1の資産を占める。日本でも、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友トラスト・ホールディングスの4社が署名した。

今回の正式発足を受け、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「同原則により、責任を果たすための説明責任と、実行を推進するための大志が生み出された」と強調。特に、気候変動緩和や気候変動適応の分野へのファイナンスが促進されることが期待され、直接金融のみならず、間接金融においてもESG市場は拡大していくものと考えられる。

  • 1CBI認証とは、イギリスのNGO、Climate Bonds Initiativeが独自に作成する基準(Climate Bonds Standard)に基づいたグリーンボンドに対する国際的な認証を指す