2018年上期
グリーンボンドマーケットレビュー
(三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)

対象期間に発行されたグリーンボンドの概要

今期(2018年上期)は、2017年10月から東京都、鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び戸田建設によるグリーンボンドが月替わりで発行された流れを引き継ぎ、特徴的な案件の起債が続いた。

2018年1月に三菱UFJフィナンシャル・グループによる二度目のグリーンボンドが欧州市場で起債されたことを皮切りに、2月には鉄道建設・運輸施設整備支援機構により初の環境省モデル事業となったグリーンボンドと同スキームによる2回目の起債が行われた。3月にはプロジェクトボンド仕立てのグリーンボンドの起債が続き、4月には三菱UFJリースによる本邦初のノンバンクセクターによるグリーンボンド、5月には日本リテールファンド投資法人によるJ-REIT初のグリーンボンド及び日本郵船によるグローバル海運業界で世界初となるグリーンボンドの起債が行われた。そして6月には三菱地所による総合不動産会社初のグリーンボンドが続き、今期は全ての月においてグリーンボンド発行がなされている。

また、今期新たに環境省によるモデル事業として選定された日本郵船及び三菱地所による起債を含む今期発行されたグリーンボンドは、その後に続くグリーンボンドの先行事例として本邦グリーンボンドマーケットの発展において非常に重要な位置を占めるものになっている。

とりわけ、国内発行体が手掛ける「再生可能エネルギー」、「グリーンビルディング」及び「クリーンな輸送」をグリーンプロジェクトとして選定した際に、グローバルな評価機関からいかに評価されるかという目線が示されたことが、同種のグリーンプロジェクトを対象としたグリーンボンド検討の促進につながったものと思われる。

また、発行体によるプレスリリース、グリーンボンド特設ページ等の開示方法及び法定開示書類への記載事項についても、複数の事例が登場したこと、加えて、グリーンボンド投資家の投資表明が定着してきたことも今期の大きな進展である。

国内発行体による発行リスト(2018年上期)(プロジェクトボンドを除く)
発行体 発行時期 発行金額 資金使途 利率 償還期間
三菱UFJフィナンシャル・グループ 2018年1月 5億ユーロ 再生可能エネルギープロジェクト向け融資 0.680% 5年
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 2018年2月 245億円 都市鉄道利便増進事業(神奈川東部方面線) 0.630% 20年
三菱UFJリース 2018年4月 100億円 太陽光発電向け融資事業 0.180% 5年
日本リテールファンド投資法人 2018年5月 80億円 グリーン適格資産であるGビル吉祥寺02の取得資金の一部等への充当を目的として実施された借入金に付随する借換 0.210% 5年
日本郵船 2018年5月 100億円 環境対応船の技術ロードマップで予定する投資(LNG燃料船、LNG燃料供給船、バラスト水処理装置、SOxスクラバー) 0.290% 5年
三菱地所 2018年6月 200億円 「東京駅前常盤橋プロジェクト」A棟建設に関連する支出 0.090% 5年

グリーンボンドに対する発行体の関心動向

2018年上期は、グリーンボンドに対する投資家ニーズの強さがどの程度あるのかということについて、発行体から最も大きな関心が寄せられていた。また、本邦初若しくは世界初の起債を行うことで、ステイクホルダーに対するメッセージのインパクトを極大化していくことに対しても重視される傾向にあった。加えて、環境省による補助金制度及びモデル創出事業に対する関心も非常に高いものであった。

グリーンボンドに対する投資家の関心動向

2018年上期は、債券投資においてESG要素をどのように織り込んで行くか、また、グリーンボンドをどう評価すべきか、どのように位置づけるべきかについて、多くの投資家が手探りで検討を進めている時期であった。結果的に、数多くの投資家がグリーンボンドの投資表明を行ったことで、グリーンボンドマーケットの発展が歓迎されている事実が市場に示されたことが、新たな発行体のグリーンボンド検討に繋がっていった。

その他グリーンボンド市場のトピックス

2018年6月にInternational Capital Markets Association(ICMA)グリーンボンド原則が2018年版に更新された。併せて、ソーシャルボンド原則も2018年版に更新されたほか、新たにいくつかの文書が公表されている。

例えば、投資とSDGsの達成を結び付けようという国際資本市場の機運を受けてグリーンボンドによるインパクトをSDGsに照らして評価できるよう「持続可能な開発目標(SDGs)に照らしたハイレベルマッピング」が、また、発行体、引受金融機関、投資家及びその他の利害関係者に対する外部評価プロセスに関する情報を提供し、透明性を高めるために「グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティ・ボンドに係る外部評価ガイドライン」が公表された。

これらの文書に関しては参考和訳が公開されており、本邦においてもグローバル基準のグリーンボンド組成が期待されている。

2018年の更新においては、グリーンボンド原則自体への大きな変更はなかったものの、外部レビューやインパクト評価の重要性の高まりが反映されたものとなった。

2018年3月に欧州委員会がサステナブルファイナンス行動計画を公表し、サステナビリティに関するタクソノミを制定する方針を示すなど、グリーンの定義についての国際的なコンセンサスはパリ協定等の国際合意の達成のためのロードマップも踏まえ、絶えず変化していく可能性がある。

このような動きを踏まえると、数年前にグリーンであった基準が永続的にグリーンと位置づけられる保証はなく、本邦市場におけるグリーンボンドの呼称に対する市場からの信任を高めていくためには、技術革新の状況やグローバルな議論の動向にも留意しグリーンボンドのクオリティを維持向上していくことが重要である。