2018年第4四半期
グリーンボンドマーケットレビュー
(野村證券株式会社)

対象期間に発行されたグリーンボンドの概要

今年度に入り、発行が本格化してきたグリーンボンドだが、2018年第4四半期(10月~12月)においても事業法人、投資法人の多様な発行体による起債が行われている。環境省による発行促進体制整備事業による補助金の交付が発行体の検討を後押ししていると考えられる。

事業法人としては、2018年10月にANAホールディングスによる東京都大田区において建設中の訓練施設(2017年7月着工、2020年3月供用開始予定)の建設資金の一部に充当することを使途とした航空会社として初の起債とともに、丸井グループが国内小売業界および国内における再生可能エネルギーによる電力調達(RE100)を使途とする初めての起債が行われた。

不動産投資法人は環境に配慮が行われたグリーンビルディングを資金使途とするグリーンボンドの発行体として、多くの起債が行われている。2018年12月におけるインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の起債は投資法人債として初の補助金対象案件となり、同様の取り組みによる発行が増加している。

また、2018年11月には中国銀行東京支店(Bank of China Limited, Tokyo)によるユーロ円建て300億円及びユーロ人民元建て8億人民元のグリーンボンドが発行された。本案件は円債市場において、初のアジア発行体によるグリーンボンド発行となる。資金使途は持続可能な水資源及び排水管理やクリーン運送に関連した適格プロジェクトとされ、Climate Bonds Initiative (CBI)による発行前認証を取得しており、円建て債では初のCBI認証グリーンボンドとなるなど、グリーンボンドの発行体のすそ野の広がりが伺える。

国内グリーンボンド発行リスト
発行体 発行時期 発行金額 資金使途(要約) 利率 償還期間
三菱UFJFG 2018年10月 EUR 500mil 既存及び今後の適格グリーンビルディング、再生可能エネルギー案件、グリーンボンドへの融資資金 0.980% 5年
日本政策投資銀行(DBJ) 2018年10月 EUR 700mil DBJ環境格付融資によるC以上企業、DBJ Green Building認証物件、GRESB取得物件等、再生可能エネルギー、クリーン交通機関 0.875% 7年
東京センチュリー 2018年10月 100億円 子会社による太陽光発電設備のリース資産取得のために発行したCP償還資金に充当 0.200% 5年
ANAホールディングス 2018年10月 100億円 東京都大田区において建設中のグリーン適格の訓練施設の建設資金の一部に充当 0.474% 10年
大林組 2018年10月 100億円 再生可能エネルギーの各発電施設、SEPの建造、グリーンビルディング取得に係る資金 0.130% 5年
丸井グループ 2018年10月 100億円 (i)RE100の取り組み、(ii)GHG削減、(iii)再生可能エネルギー発電 0.190% 5年
東京都 2018年10月 50億円 スマートエネルギー都市づくり等、東京都の環境対策事業 0.020% 5年
東京都 2018年10月 50億円 1.004% 30年
大王製紙 2018年10月 150億円 難処理古紙の有効活用に関する設備、及びバイオマスボイラーによる発電設備資金 0.605% 7年
大王製紙 2018年10月 50億円 0.864% 10年
ジャパンリアルエステイト投資法人 2018年10月 100億円 グリーンビルディングの改修工事資金及びグリーン適格資産の取得に係る借入金の返済資金に充当 0.230% 5年
芙蓉総合リース 2018年10月 100億円 太陽光発電設備資金のCP償還及び子会社の太陽光発電設備の設備投資 0.210% 5年
大和証券グループ本社 2018年11月 100億円 再生可能エネルギー発電プロジェクト及びグリーンビルディングへの投融資資金 0.230% 5年
東京都(個人向け) 2018年12月 USD 89mil スマートエネルギー都市づくり等、東京都の環境対策事業 2.910% 5年
戸田建設 2018年12月 50億円 2021年3月末までに浮体式洋上風力発電施設(五島市沖洋上風力発電事業)の建設資金に充当 0.250% 5年
インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人 2018年12月 55億円 グリーン適格資産の取得に要した借入金の返済資金の一部又は全部に充当 0.580% 5年
三菱UFJフィナンシャル・グループ 2018年12月 USD 120mil グリーン適格不動産に対する融資資金、再生可能エネルギープロジェクトに対する融資資金 4.127% 10年
GLP投資法人 2018年12月 51億円 グリーン適格資産の取得のために借り入れた借入金の返済資金 0.680% 10年
三井住友銀行 2018年12月 USD 227.8mil 再生可能エネルギー、エネルギー効率化、グリーンビルディング、クリーンな運輸、汚染の防止と管理 3.370% 4.5年
三井住友銀行 2018年12月 AUD 83.2mil 2.900% 4.5年

グリーンボンドに対する発行体の関心動向

2018年に入り、グリーンボンドに対する投資家の関心が高いことが確認され、発行体によるグリーンボンド発行についての検討が進み、環境省による補助金制度及びモデル創出事業も発行体を後押しし、2018年第三四半期は、多くのグリーンボンド発行が行われた。発行体の業種も多様であり、業界における初のグリーンボンド起債も見られ、日本企業によるグリーンボンドへの関心の高さが印象付けられることとなった。

グリーンボンドに対する投資家の関心動向

グリーンボンドへの投資を行った投資家による投資表明が行われており、中央公的、生命保険会社、信託銀行による投資表明に加えて、新たな地方銀行、信用金庫、学校法人等の諸法人による投資表明が行われており、グリーンボンド投資のすそ野の広がりを感じさせる。

その他グリーンボンド市場のトピックス

海外の発行案件においては、10月にセーシェル共和国が持続可能な海洋・漁業プロジェクトの支援を目的とするソブリン・ブルー・ボンド1,500万ドルを世界で初めて発行した。ブルー・ボンドにより調達された資金は、海洋保護区域の拡大、漁業権優先割当てにおけるガバナンスの改善、及びセーシェルのブルー・エコノミーの開発支援に使用される。セーシェルは花崗岩とサンゴでできた115の島々から成る環礁国で、総面積は455 km2に上り、約140万km2に及ぶ広大な排他的経済水域を有している。海洋資源はセーシェルの経済成長の根幹であり、漁業は観光に次ぐ国の最重要産業として年間GDPに大きく貢献しており、国民の17%が漁業に従事し、水産加工品は国の輸出総額の約95%を占める。

欧州では、欧州委員会の「サステナブル・ファイナンスのタクソノミー」が発表され、内容へのフィードバック募集とワークショップへの参加要請が行われた。2018年3月に欧州委員会は「サステナブル・ファイナンスに関するアクションプラン」を公表し、その中で環境的に持続可能な投資を分類するタクソノミーを策定するとしている。ワークショップによる結果を6月19日にリリースする予定としている。

また、国際資本市場協会(ICMA)と日本証券業協会によって、昨年に引き続き2回目の開催となる共同開催コンファレンス「グリーンボンド及びソーシャルボンド市場の発展 ―アジアの展望」が行われた。グリーンボンドが市場に認識され始めていた前回から、未だにアーリーステージであるものの、市場での認知度は飛躍的に拡大してきている。国内市場におけるグリーンボンドの発展が意識された。

国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の2030年での達成を掲げた2025年大阪・関西万博の開催が決定し、さらには2019年には大阪でG20が開催されることが予定されており、日本におけるSDGsへの取組みを世界に知ってもらう好機となると期待される。